「危機時期」にある企業をサポート
企業や事業には四季に相当するステージがあると言われます。企業や事業の成長のステージは、(1)創業期、(2)成長期、(3)成熟期と段階を経て進んでいきます。そして、その各過程の中で、(4)転換期・危機時期が生じ得ます。
企業や事業は安定して右肩上がりの成長を続けていくとは限りません。企業や事業の成長が市場のニーズや景気の変動といった外部的要因に左右される以上は、いつまでも安定経営を継続していくことは不可能です。企業や事業は、市場のニーズや景気の変動に応じて柔軟に対応をしていくことが求められますが、ひとが風邪をひいたり病気になったりするのと同じで、企業や事業の経営も様々な要因によって安定性を阻害されることがあるのです。昔から企業や事業の寿命は30年と言われていますが、どのような企業や事業であっても、必ずどこかのタイミングで、転換期・危機時期を迎えます。当事務所は、創業以来、数多くの再生案件を手掛けてきました。日々蓄積され続けている多くの経験とノウハウを基に、企業の安定経営と、企業再生を支援いたします。
1 当事務所の取り組み
1.当事務所のこれまでの取り組み
当事務所は、2007年4月の設立以来、企業の「早期事業再生」「倒産回避」「倒産対応」に多くの時間と労力を割いてきました。特に、今よりも景気の悪かった2007年から2011年ころまではこれらの案件は事務所全体の業務の中でも多くのウエイトを占めてきました。早期事業再生・倒産回避・倒産対応の分野は、私たちが、設立以来、最も力を入れて取り組んできた分野の1つです。
2.当事務所の企業の再生に向けた姿勢
企業の置かれている状況が悪化してきた場合、そのまま放置してしまえば、時間の経過とともに対処方法の選択肢は少なくなり、最終的には清算という形で幕を引かざるを得なくなってしまいます。そして、一つの企業の清算による波紋は、その会社だけではなく、その会社の関係者や取引先、ひいてはそれらの家族を含めて多くの人々に影響を及ぼします。特に、当事務所のある北海道においては、一部の業界を除いて全体的に景気の底冷え状態が続いており、経営状況が悪化する企業の数は一向に減少する気配がありません。このような経済状況の中で、当事務所は、これまで当事務所の弁護士がさまざまな規模や業種、業態の企業の事業再生・倒産処理案件にさまざまな立場で関与してきた経験をもとに、また、事業再生に携わる各種のプレーヤー(公認会計士、税理士、CTP、ATP、ターンアラウンドマネージャー、企業再生ファンド等々)と連携しながら、今後も、できる限り多くの企業や事業の再生に勢力的に取り組んでいきます。
3.当事務所の企業の再生に向けた基本方針
当事務所の企業の再生に向けた基本方針は「事業の存続可能性を高めて企業の再生を実現する」ことに尽きます。最終的に清算手続を用いなければならない場合であっても、「公平」「公正」「迅速」な法の理念を損なうことなく、「事業の存続可能性を高めて企業の再生を実現する」ことを基本方針として全ての業務を進めていきます。また、企業再生の分野は、国の政策の変更によって、その手法も大きく変化を強いられていきます。そのため、常に、最新の情報をキャッチアップした上で、金融機関の対応の変化を予測しながら、最新の手法を講じられる体制を整えています。
4.当事務所の実績
当事務所では、これまで数多くの企業の再生を手掛けて成果を残してきました。企業価値を棄損する可能性の低い私的再生を基本として、ときには、民事再生手続を利用したり、破産手続を利用する場合でもM&Aや資産譲渡を組み合わせたりしながら、企業が置かれているその時々の状況に応じて、当事務所に蓄積されている経験と実績とノウハウを駆使しつつ企業の再生を図ってきました。当事務所の弁護士が再生に関わった業種は多様で、全てを列挙することはできませんが、IT関連業、製造業、販売業、飲食業、学校法人、旅行業、不動産業、不動産オーナー、農業生産法人等、多岐に亘ります。
2 企業の再生に向けた全体像
1.手続における多様な選択肢
企業の再生のためには、企業が置かれた状況に応じた適切な手続選択が必要になります。手続選択を誤るということは、医師が薬の処方や手術の術式を間違えるようなもので、再生できるはずの企業も再生ができなくなり、企業の「死」という結果に直結していきます。企業の再生のためには「企業が置かれている状況を正確に把握すること」と「その企業の再生に向けた最適な手法を選択すること」が不可欠です。当事務所ではこれまでの経験と実績に基づき、以下の表に記載した様々な手法の中から、その企業が置かれている状況に照らして、その企業の再生に向けた最適な方法を選択していきます。
2.企業価値に劣化が生じていく各ステージ
企業再生の基本は「企業が置かれている現在の状況を正確に把握すること」です。企業が置かれている状況に応じて、講ずべき再生の手法も変わっていくからです。企業価値の劣化が生じていく過程には以下の各ステージがあります。
たとえば、まずは、何らかの要因により売上が低迷し、期間損益が赤字になっていきます。その状況が改善できないまま時間が経過すると、赤字が続き、累積していきます。これが損益の低迷です。次に、損益が低迷すると、企業の資産や負債にも影響が生じてきます。企業の商品が売れなければ在庫が滞留します。商品が売れなければ、仕入代金や従業員の給料の支払いのために、借入の増大を招きます。そうすると結果的に企業の貸借対照表は毀損されていきます。資産は不良化し、負債は膨らんでいきます。続いて、損益が低迷して、貸借対照表が悪化すると、企業の信用が低下していき、売上が減少したり、新規借入や借り換えができなくなったりして、手元のキャッシュが枯渇していき、支払期日にある債務の支払いにも窮していきます。これが資金繰りの悪化です。最後に、資金繰りが悪化して、どうにもならなくなると、経営破綻という状態に陥ります。
3.手続の選択
当事務所では、これら多種多様な手続の選択肢から「
事業の存続可能性を高めて企業の再生を実現する」ことを前提として、クライアントの置かれている状況を踏まえて、以下の各手法の中から最適な手続を選択して、手続を進めていきます。
(1)リ・スケジュール
金融機関債権者等に対する支払条件の緩和(一定の期間は利息のみの支払いにして貰ったり、元金の返済額を少なくして貰ったりする等)に関する協力を要請しながら、資金繰りの改善を図りつつ、収益力の増強を目指し、企業の再生を図る手法です。特に、金融機関債権者の属性(メガバンク・地銀・第二地銀・信金・信組・政府系金融機関・その他)を十分に把握した上で、これまでの実績と経験を活かしながら、慎重に手続を進めていくことが求められます。
(2)第二会社方式
事業譲渡や会社分割を活用して新会社(第二会社)での事業の存続・雇用の維持・取引先の関係の維持を図りつつ、旧会社における過剰債務のカットを図り、企業の再生を図る手法です。濫用的会社分割が問題となる場面があり、手続の進め方によっては、新会社に悪影響が生じる場合がありますので、これまでの実績と経験を踏まえながら、慎重に手続を進めていくことが求められます。
(3)事業再生ファンド
既存の金融機関債権者が保有している債権を事業再生ファンドに買い取って貰い、リ・ファイナンスを受ける際に、債務免除をして貰うことで、過剰債務を圧縮し、金融取引の正常化を目指す手法です。事業再生ファンドごとに条件が異なりますし、活用できる場面も限られてきます。当事務所の有するネットワークを活用しながら、状況に応じて対応を進めていきます。
(4)その他の手法・清算型私的整理・放置
サービサーの活用、DES、DDS、その他様々な手法がありますが、多くの法律事務所で集まっているものではなく、当事務所独自のノウハウが多分に含まれている手法ですので、ここでの紹介は控えさせて頂きます。ただ、これらの場合であっても、債権者間の「公平」「平等」「債権者の満足の極大化」「手続の透明性」といった法の趣旨を遵守する中で、それぞれの手続を進めていきます。
(5)会社更生
大規模な株式会社用いられる強力な再建手続手法です。最大の特徴は、担保権の実行が原則として禁止されるなど、債権者に対する制約が最も大きな再生手法です。また、従来の経営陣の交代も要求されます。会社更生手続は、年間でも全国で数件しか活用されることがない手続です。当事務所も、これまで、単独で会社更生手続を遂行した実績はありませんので、会社更生手続を利用する場合には、実績を有する他の倒産事件専門の法律事務所の弁護士と共同で手続を進めさせて頂きます。
(6)民事再生
民事再生手続の最大の特徴は、企業が手続を申立てた後も、原則として従来の経営陣が経営権を維持しながら、再生を図っていける点です。当事務所の弁護士は、これまで多様な業種の民事再生手続を遂行してきた実績を有していますので、これまで蓄積された実績とノウハウに基づき、企業の再生を図っていきます。なお、裁判所といっても、東京地方裁判所民事20部の運用と札幌地方裁判所民事4部の運用には違いがあるなど、裁判所ごとに運用が違う点がありますので、各運用の違いを踏まえた適切な手続遂行が重要なポイントになることがありますので、それらの実情を踏まえて適切な手続遂行を進めていきます。
(7)特定調停
特定調停手続を利用した企業の再生の最大の特徴は、民事再生手続や会社更生手続のように全ての債権者を手続に取り組む必要がなく、一部の債権者との間で裁判所を利用して企業の再生のための話し合いを進めることができるという点です。「中小企業再生支援協議会等」の公的機関に相談しながら対応を進めることが求められる場面が多く、債権者の特徴を踏まえた手続の遂行が求められます。
(8)破産・特別清算
破産手続・特別清算手続は、ともに清算型の法的手続です。当事務所では清算型の再生手続を用いる場合であっても、「事業の存続可能性を高めて企業の再生を実現する」という危機時期にある企業に対するサポートの基本方針に従って進めていきます。この方法は、当事務所独自のノウハウが多分に含まれている手法ですので、具体的な紹介は控えさせて頂きます。ただ、これらの場合であっても、債権者間の「公平」「平等」「債権者の満足の極大化」「手続の透明性」といった法の趣旨を厳格に遵守し、それぞれの手続を進めていきます。
3 アーリーステージ
P/Lが悪化した程度の段階(アーリーステージ)であれば、様々な打つ手があります。売上が減少しているのであれば、その要因を確認して売上を増加するための方策を検討して対応を講じます。経費が膨らんでいるのであれば、その要因を確認して経費を削減するための方策を検討して対応を講じます。当事務所に蓄積されているノウハウや、ネットワークや、実績を紹介されて頂き、クライアントの置かれている状況に適した実現可能性の高い方法を選択しながら、P/Lを改善するための手立てを講じていきます。
4 ミドルステージ
B/Sが棄損した段階(ミドルステージ)では、金融機関や一部債権者に相談しながら、資産の売却や資産の流動化、負債の圧縮等、私的再建を前提とした手続を利用しながら、クライアントの置かれている状況に適して、かつ実現可能性が高く、さらに事業への悪影響が高くない方法を選択しながら手続を進めていきます。私的再建手続のみで改善が見込めない場合には、第二会社方式や民事再生手続の利用も検討します。
5 レイターステージ
資金繰りが悪化した段階(レイターステージ)では、私的再建を基本としつつも、法的再建手続を視野に入れながら状況の改善を図っていきます。当事務所に相談頂く案件もこの段階になってからのことが最も多い段階です。具体的な方法は、クライアントの置かれている状況によって様々ですが、いずれにしてもクライアントが置かれている状況を正確に把握した上で、かつ実現可能性が高く、可能な限り事業への悪影響が高くない方法を選択しながら手続を進めていきます。
6 当事務所における依頼の流れ
1.クライアントが置かれている状況を正確に把握する
どの段階でご相談頂くかによって、最初に要求する資料や要求する資料をどのくらいの期間で提出して頂くか等の期間は変わってきますが、まずは、概ね以下の資料をご用意頂き、早期に打ち合わせの機会を設けさせて頂きます。実際にどのような資料をご用意頂くかは、その企業が営んでいる業務や状況によって異なりますので、事前に、ある程度のお話をお伺いした上で、お伝えさえて頂いています。
(1)事業の内容がわかる資料(WEBページの写し・パンフレット等)
(2)定款
(3)履歴事項証明書
(4)確定申告書直近3期分(勘定科目内訳明細)
(5)債権者一覧表(既に用意があれば)
(6)担保権者一覧表
(7)リース債権者一覧表
(8)労働債権者一覧表
(9)その他(当事務所で特にご依頼している書類がありますが当事務所のノウハウですのでここでの記載は控えさて頂きます)
2.上記1に適した方法と再生への道筋を検討し選択する
上記1を踏まえて、当事務所で適した方法を検討させて頂きます。企業の規模や営んでいる業種や企業が置かれている状況によって、選択する方法は様々です。再生計画の立案に際しては、公認会計士・税理士のアドバイスを頂く必要がある場合もあります。既にお付き合いのある公認会計士・税理士がいれば協働で作業をさせて頂きますし、そのような専門家がいなければ、当事務所から紹介させて頂くことも可能です。
3.上記2に適した方法を実行する
上記2の検討結果を踏まえて、実際に手続を進めさせて頂きます。繰り返しになりますが、当事務所では、最終的に清算手続を用いなければならない場合であっても、「公平」「公正」「迅速」な法の理念を損なうことなく、「事業の存続可能性を高めて企業の再生を実現する」ことを基本方針として実際の手続を進めていきます。
4.経営者の生活の再建も並行して考える
上記の流れの中で並行して考えていかなければならないのが経営者の生活の再建です。殆どの中小企業においては経営者こそが最大の資産です。経営者の生活の再建を考えずして、企業再建は容易になし得ません。また、2014年2月1日からは「経営者保証に関するガイドライン」が実施されています。もちろん、企業の再生の過程においては、債権者から経営者責任を求められる場面も生じ得ます。そのような場面においても、経営者責任の取り方については慎重に検討を行い、適切な対策を講じていきます。「企業の再建を考えるにあたり経営者の生活の再建抜きには考えない」をモットーとして、当事務所では、企業の再建と並行しながら、経営者の生活の再建を進めていきます。