業務内容

1 為替デリバティブ倒産(黒字倒産)の増加

 2008年9月のリーマンショック後、為替デリバティブでの巨額損失に苦しむ中小企業の倒産が急激に増加しています。

 

 帝国データバンクが2010年5月に発表した調査結果によれば、2003年~2010年4月まででデリバティブ損失関連の倒産は24件判明しており、とくに2009年には9件へ増加、2010年も4月までで8件発生していたとのことです。また、東京商工リサーチが2010年12月9日に発表した記事によれば、2010年1月~11月の「デリバティブ損失倒産」は20件とのことです。この商品は、2003年から2007年頃に円高に対するリスクヘッジとして組成され、約2万社の中小企業に販売され、約4万件の契約を残しており、いわゆる"倒産予備軍"が多数存在する状況と言われております。

 

 金融庁もこの事態を重く見て、2010年12月4日、メガバンクなどを対象に通貨デリバティブ商品の販売方法や損失状況などについて実態調査に乗り出すと発表し、平成23年3月11日、「中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査の結果について(速報値)」(http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20110311-2.html)を発表しました。同調査によれば、リーマンショック前の2004年度(平成16年度)から2007年度(平成19年度)にかけて販売された為替デリバティブ商品についての苦情が9割を占めているとのことです。また、為替デリバティブ取引における損益状況は何と1400億円の損失となっています。

 

 このような状況の下、2011年1月19日、メガバンク3行が金融庁の行政指導により、為替デリバティブで多額の損失を抱えた中小企業に特例融資をするとの報道がされました。さらに、この問題は行政の場にとどまらず、司法の場でも争われるようになっています。

2 為替デリバティブ問題とは?

外貨コールオプションの場合

 輸入事業者が為替変動リスクをヘッジするために、外貨コールオプションを購入した場合、円高が進行してもオプションを放棄すれば足ります。  例えば、1ドル=110円のときに、1ドル=100円で5万ドルを調達するコールオプションを購入すれば、1ドル=110円のままだと5000ドル安く買えることになり、また、1ドル=90円になってしまえば、コールオプションを放棄して、1ドル=90円で買うことができます。もちろん、コールオプションを購入するためにはその売買代金(プレミアム)がかかりますので、そのプレミアムは無駄になりますが、その分の損失で済みます。

為替デリバティブ取引の「罠」

 しかし、問題となっている為替デリバティブ取引では、コールオプションを購入するためのプレミアムを節約するため、事業者がコールオプションを購入するという内容と、事業者が金融機関に外貨プットオプションを販売するという内容が組み合わされています。プットオプションの販売では、事業者がプレミアムを受け取ることができるため、長期的に見ればプレミアムが全体として差し引きゼロとなるというものです(ゼロコストオプション)。

 

 例えば、1ドル=110円のときに、事業者は1ドル=100円で5万ドルを購入するコールオプションを購入し、事業者が金融機関に1ドル=100円で5万ドルを販売するプットオプションを販売したとします。円高により1ドル=90円になってしまうと、事業者は、1ドル=100円で購入する権利を行使する必要はないので権利を放棄します。しかし、金融機関が1ドル=100円で5万ドルを販売する権利を持っていますので、これを事業者に行使してきます。その結果、事業者は、結局、1ドル=100円で5万ドルを購入する義務を負うことになってしまい、損失が発生してしまうのです。

 

 しかも、このような商品は、5年や10年といった長期の契約となっており、解約の違約金が多額な内容となっているため、現在のように円高が続いている状況では、契約をした事業者の損失は膨大なものとなってしまい、事業は黒字なのに倒産してしまうという事態も引き起こしてしまいました。

 このような事態となっても、金融機関は、損失補てんをすることが禁じられているとして、契約にしたがって取引を継続するか、あるいは、契約に従って多額の解約金を求めるという対応をしております。

3 為替デリバティブ問題への対処方法

 この問題への対応としては、契約に至る経緯や契約内容などを踏まえ、契約に問題があるような場合には、金融ADRを活用したり、事情によっては司法の場を利用したりすることも考えられます。 また、損失の状況を踏まえ、損失が会社の資金繰りを相当程度圧迫してしまっている場合には、私的再建手続の活用や、民事再生や会社更生手続の申立てなども視野に入れて全体的な対応を進めていかなければならない場合も考えられます

 

 すなわち、契約自体に関する問題を個別の事情に基づいて分析検討するとともに、企業の経営に与える影響とその善後策を、客観的に検討していくことが必要になるため、冷静かつ客観的な視点をもった専門家の助力が不可欠です。

 

 したがって、実際に為替デリバティブ取引による損失が発生している場合、これ以上損失が拡大し手遅れになる前に、少しでも早く、この問題を取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

 

当事務所は、為替デリバティブ取引問題に積極的に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

 


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